2020年8月 6日 (木)

美味しい進化: 食べ物と人類はどう進化してきたか

美味しい進化: 食べ物と人類はどう進化してきたか


本のタイトルから、食べ物の歴史についての軽めの本だろうと気楽に読み始めたらとんでもない。
ちゃんとした科学の本で、遺伝工学、生物学、化学等、薄っぺらな知識しかない私には全てを理解するなんて到底無理な一冊だった。


ヒトがはじめて料理をした150万年前のホモ・エレクトゥスからの人類の進化(嗅覚や味覚)や家畜の歴史、それと並行して小麦粉等の穀物栽培の歴史、加えてチーズ、ワインといった人工的な食べ物の話。


食べることも飲むことも料理をすることも好きな私にはどれも面白いテーマで、それをダーウィンの進化論と重ね合わせて行くストーリーは知的好奇心をくすぐるのだが、いかんせん難しい(笑)


全然軽い本ではなく、ジャレド・ダイアモンドの『銃・病原菌・鉄』やハラリの『サピエンス全史』にも通ずるような読み応えのある一冊です。

| | コメント (0)

2020年3月30日 (月)

昆虫食と文明

昆虫食と文明―昆虫の新たな役割を考える


80億もの人類を維持する為の主要な栄養素であるタンパク質を、ウシ、ニワトリ、ブタから摂取するには、膨大な資源を要していることも知っていたし、その解決策として昆虫食が注目されていることも知っていた。


ただ、昆虫の料理法や養殖の研究がここまで進んでいて、世界各国に広がっていることは全然知らなかった。
それを知るだけでも、読む価値のある一冊です。


加えて、昆虫食を広める上での、環境破壊の問題、食品衛生上の問題、倫理面の問題等々、さまざまな問題があることもよくわかる。


あとは嗜好の問題。
日本人は昔から、イナゴや蜂蜜を食として取り入れているからハードルは低いように思われるし、数十年前には気持ち悪がられた刺身や寿司のような生ものが、今では欧米で人気であることを考えると、世界的に受け入れられる可能性はある。(粉末にしてしまえばわからないし)


でも、なんか抵抗があるんだよね。
カブトムシの幼虫のようなものを食べるのは抵抗があるし、セミやコオロギのような形態もちょっとね(小さい頃は普通に捕まえてたけど)。
よくよく考えたら、エビやカニも同じような変な形なんだけど、なんで抵抗感がないんだろう?
海にいる生物だとよくて、土にいる生物だと気持ち悪いのか?


タンパク質を、低コストで持続可能的に獲得するという観点からは、頭ではその可能性を理解出来るのだが、実現には時間がかかるかな?

| | コメント (0)

2020年3月 4日 (水)

銃・病原菌・鉄

文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)文庫 銃・病原菌・鉄 (下) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)


これは、人類の選択、言い換えると分かれ目の話。
こういう境界とか定義に関する本、大好き。


氷河期が終わる約13,000年前から現代に到るまで、たまたまその地域に植生していた植物、発達した若しくは生き残った動物、それらを起因とした人口の増加に伴う集落や国家の形成、武器の進化、必要性を伴う文字の発明。
その陸地は南北に伸びているか、東西に伸びているかでの、獲得した技術の浸透スピードの違い。


こららの要因により、現代社会にある膨大な種類の人種、言語、文化、食生活等があり、道具や科学技術の浸透度合いの差が生まれている。
人類のちょっとした発見や工夫も含めた、13,000年に亘る、自分たちが置かれた環境下での「選択」の結果が今につながっている。


会社の長期休暇(一週間だけど)には、スケールの大きい大作を一気に読めて楽しい。

| | コメント (0)

2019年5月 2日 (木)

ホモ・デウス

ホモ・デウス 上: テクノロジーとサピエンスの未来ホモ・デウス 下: テクノロジーとサピエンスの未来
最終章の『データ教』、全てはこの章の為の伏線だったような気がする。
「集中」か「分散」か?

システム開発の世界では、メインフレームによる「集中」から分散システム、最近ではマイクロサービスアーキテクチャという「分散」化が歴史的な流れ。
政治的には、独裁制が「集中」で民主主義が「分散」だが、ブロックチェーンの世界では一部のアナーキスト達がサトシ・ハシモトが唱える民主主義以上の「分散」の世界を熱狂的に支持している。

ではデータは?

欧州を中心に、企業や個人にGAFAからデータの主権を取り戻そうというのが最近の流れ。(要は集中から分散へ)
日本でも情報銀行というのは、その文脈の中で出てきた概念。

でも、テクノロジー的に劣る普通の民間企業や個人がGAFA以上にデータを活用できるのか?
一方で、規制を受けない中国の政府やアリババは、好きなだけデータを扱えGAFA以上のことを実現できるかもしれないが、単一目的でのデータ利用からは、想像もつかないような私達にとっていいサービスが出てくるとは思えない。

一概に、「集中」と「分散」のどちらがいいとは言えないような気がする。

『サピエンス全史』から続く壮大な歴史の流れの中で、AIに繋がる知能や意識の話からデータについてまで、私達を取り巻くテクノロジーについて、色々と深く考えるいい機会をもらった。

 

| | コメント (0)

2019年3月 4日 (月)

サピエンス全史

サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福


まとまった時間がないと読めない本シリーズ。


とにかく面白い。
訳者あとがきにある「読書の醍醐味の一つは、自分の先入観や固定観念、常識を覆され、視野が広がり、新しい目で物事を眺められるようになること、いわゆる、「目から鱗が落ちる」体験をすることだろう。」
という文章が、この本の面白さを見事に伝えている。


約7万年前に始まった「認知革命」、1万2000年前からの「農業革命」、そしてここ500年の間の「科学革命」。
これらが地球や人類にどのような影響を与えてきたかの物語。


同じ「史実」を見ていても、思いもよらない著者の視点に見事なまでに自分の持っている常識を覆される。


例えば、ヒエラルキーも貨幣も宗教も人類の想像上のものだとする論調。
まさに冒頭で書いた、「目から鱗」です。


著者の膨大な知識よりも、考え抜かれた上に結論付けられたその視点。
もっと多角的にかつ柔軟に偏見なく、色々な物事を見る視点を持たなければと思い知らされます。




さ、この流れで「ホモ・デウス」も読もう。(時間かかりそう・・・)

| | コメント (0)

2018年9月 3日 (月)

リアルサイズ古生物図鑑 古生代編

古生物のサイズが実感できる!  リアルサイズ古生物図鑑 古生代編


くっだらね〜(←いい意味でね)
こういう、ビジュアルに訴える系の本って結構好き(笑)


要は、古生代(カンブリア紀〜ペルム紀・・・恐竜が出てくる前)の生物を、現代の色々なモノと並べてその大きさが直感的にわかるようにしているのだが、最高にくだらないのが、芸姑さんの横で一緒に挨拶してるイクチオステガ。
体長1mぐらいの両生類的な生物が、床の間のある和室で芸姑さんの横に並んでる(笑)
こういう写真が続くのだが、一見ふざけているようで、こういう風に、右脳に理解させることって本当に重要だと思う。


歴史の教科書がつまらないのって、文章と小さな写真だけで実物が想像出来ないからだと思ってる。(すみません、40年前のことなので、今の教科書は違うのかもしれません)


実際、この本の中には、NHKスペシャルのCGで見てた印象とは全然違う大きさの生物もたくさん出てくる。




あと、スティーヴン・J・グールドの『ワンダフル・ライフ』読んだのって、もう30年ぐらい前だから、その後の調査研究で、色々な新発見があったことを知った。
たまには情報をアップデートしないとだめですね。

| | コメント (0)

2018年4月16日 (月)

人工知能の哲学

人工知能の哲学


人工知能関連の読んだ本の中では、格別に面白い一冊。


人間の労働全てを機械に代替させようという試みである、人工知能の研究。
では、「人工知能」とは何か?
そもそも「知能」とは何か?
「知能」の仕組みとは?
という哲学的なアプローチの中で、「意味」「理解」認識」「学習」といった概念の定義を丁寧に進めており、哲学に縁がない人にもわかり易く伝えてくれる。


モノが存在することも、モノが何色であるかということも、全て私達が「騙される」ことで見ている世界。
その世界においては、積極的に世界に働きかけることが必要であり、その為には視覚情報だけではなく、能動的な運動を必要とする、というのは人と人口知能の違いをあらわすいい例だと思う。


また、人と人工知能の大きな違いはコミュニケーションにあると著者は言う。
コミュニケーションが、「シンボル」「意図」「振る舞い」という3つのレベルによって成り立つ一方で、人口知能は「シンボル」のレベルのみを対象とするものであるというもの。このレベルではコミュニケーションを行う主体とはなり得ないのである。




この先、人工知能がどこまで発展するかはわからないが、「弱い人工知能」を使って、人間がより賢くなり、人間社会が豊かになっていくような人口知能の使い方を模索していく必要がある、という著者の考えには大きく賛成です。


| | コメント (0)

2018年1月16日 (火)

現代暗号入門

現代暗号入門 いかにして秘密は守られるのか (ブルーバックス)

必要に迫られて、あわてて暗号理論の一夜漬け勉強(笑)


先ずは入門編から。
共通鍵暗号、公開鍵暗号、ハッシュ関数、RSA、楕円曲線と、暗号理論の全体をざっと俯瞰するにはいい本です。
しかも、脆弱性が見つかった暗号方式であれば、そこにどういう問題があったかということも含めて概説してくれているので、逆に現時点でNISTに認められているような暗号が、なぜ「安全」と言われているのかもよくわかる。


これまで、直接的にセキュリティに関わる仕事をしたことがなく、断片的に「用語」を知っているレベルだった私には、暗号理論全体を俯瞰して、なにがポイントになるのかの「掴み」にはいい本でした。

| | コメント (0)

2016年7月 3日 (日)

第三のチンパンジー: 人間という動物の進化と未来

若い読者のための第三のチンパンジー: 人間という動物の進化と未来



人間とはどういう動物なのか?がテーマの本。
人間が持つ色々な性質の中で、現在の我々が抱えている問題に関わる2つの特徴があるという。
1つは、お互いに大量の人間を殺しあう性質、2つ目は環境と資源を破壊しようとする性質。


例えばアメリカ大陸の例。
正確に歴史を把握していない私は、漠然とヨーロッパ人がアメリカ大陸に上陸した際に、それまでそこにあった全ての自然や動物(人間も含めて)を根絶やしにしたと思っていたのだが、この著者によるとそうではないらしい。
 

1万2千年前頃、インディアンが当時陸続きだったベーリング海峡から北アメリカに入り、大型の哺乳類〜マンモス、マストドン、3トンもあるナマケモノ、クマほどの大きさのビーバー、、、をたった1000年で絶滅させながら南アメリカの最南端に到着したとのこと。


その後、16世紀にやってきたヨーロッパ人が、今度はインディアンを絶滅させたのはご存知の通り。


要は、日本では縄文時代にあたるような時代の人間は、今と同じように全てを根こそぎ破壊する性質を備えていたということ。


日本人的な感覚だと、世界各地で肥沃な土地を砂漠化してきたヨーロッパ的なやり方って、ピンとこないかもしれないが、でも、アイヌに対してやったことや、捕鯨だって本質的には同じようなことだと思う。


そういった人間が持つ性質を正確に把握した上で、将来を考えることが重要だと著者は説く。




ただ、この本って、よくある警笛を鳴らすだけの本かと言うとそうではない。
この著者の膨大な知識を背景に、チンパンジーやボノボと人間の違いに何によって生まれたか?や、世界の文明の発達スピードの差がどういう地理的条件によって生まれたか?という、壮大な人間の歴史を具体例に基づき説明してくれていて、「人間とは?」というテーマに興味を持った人への入門編としては、非常に面白い一冊となっています。

| | コメント (0)

2016年1月31日 (日)

人類が消えた世界

人類が消えた世界



地球上から人類だけがいなくなったら、その後の世界はどうなるのか?


700万年前に人類が誕生してから、我々人類がどう地球を変えてきたかを探求することによって、人類が消滅した後の未来を描こうというアプローチ。


例えば、アメリカ大陸に人類が到達してから、たった1000年で滅亡してしまった、ゾウやナマケモノのような超大型哺乳類は戻ってくるのか?


人が常にメンテナンスをしないと崩壊してしまうマンハッタンはどうなるのか?
といったテーマで、生物、化学、地理、建築等、あらゆる観点からの考察は、正直私にはちょっと難しすぎたが、非常に興味深い内容となっている。




そんな中でも特に興味を惹くのが、プラスチックと放射能。
ポリ塩化ビニールやポリスチレンのような人工的なポリマーが作られてから、まだたった50年ちょっとの間に大量の製品が世界中で産み出されて廃棄されている。プラスチック製品以外にも、化粧品のように「ゴミ」とは意識せず最終的には海へ流されていくものもある。
これらのプラスチックは、誕生から50年、ほとんど減ることもなく存在していて、この先も、地質学的年代で、10万年、100万年後とかに、プラスチックを分解できる微生物でもあらわれない限り、永遠に残り続けるのだ。


放射能については、その途方も無く長い半減期。
人類が消滅した後には、人間がなにも安全管理をしない状況になるので、世界中の原子力発電所で福島と同じことが発生する。


既にチェルノブイリに戻ってきている人間や動植物が、この先、遺伝子レベルでどうなるかはわからないが、想像も出来ないぐらい長い時間、この地球に負荷をかけ続けることになるだろう。


人類を養うための食料、便利な生活を支える工業製品やエネルギー、ここ5000年ぐらいの間に築き上げた建築物、色々な負荷がなくなった時に、地球はどこまで元の姿に戻るのか?


壮大な未来予測の世界を楽しみました。


| | コメント (0)