2021年8月13日 (金)

氏名の誕生

氏名の誕生 ――江戸時代の名前はなぜ消えたのか (ちくま新書)
歴史が好きで色んな本を読んできたけど、例えば江戸古地図を見てても、なんでこんなに「松平」という名前が多いのかもわからず、古文書だと「源」とか「藤原」とみんな書いてあるのかもわからず。。。(書籍で名前が出てくる時には、松平も源もついてないし・・・)

なんとなく気になるまま放置していた疑問が、この一冊で全部解決!

現代で言うところの「氏名」、武士や百姓の「名前」(苗字+通称)、「姓名」(姓、尸(カバネ)、名乗)の構成、武士と百姓・町民の氏名に対する考え方の違い、明治維新の際の、武士と公家の考え方の違い、それらを踏まえて現代の氏名がどのように出来上がったのかがよくわかる。

例えば、氏名=大隈重信
名前は大隈八太郎(苗字+通称)
姓名は菅原朝臣重信(姓+尸+名乗)

氏名の構造、構成を知るのも面白いのだが、明治維新後の氏名に関する混乱はもっと面白い。
こんな紆余曲折を経て、今の私達の所謂「名前」が出来上がっているのですね。

 

 

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2021年6月16日 (水)

東京「暗渠」散歩

失われた川を歩く 東京「暗渠」散歩 改訂版


都内の神社や文化財、建物、橋、坂、屋敷跡とか、結構いろんな所を巡ってきたけど、まだ行ってない所があった。


今は埋め立てられた川や水路は、目に見えないから行ってみようと思わないもんね。


例えば、玉川上水を作った歴史は勉強しても、四谷の玉川上水余水吐があった所を実際に見たことはないし、笄川という場所には行ったことがあっても、どこからどう川が流れていたのかは気にしたこともない。


何度も通ったことがある道が、実は暗渠だったということを知ったり、実際に行ってみると、この道(暗渠)がここに出るのか〜と水路の繋がりに驚いたり、この本をきっかけに街の楽しみ方が広がりました。




でも、昔は坂が好きで、坂を見つけると坂道ダッシュしたり上っていたのに、川の流れに沿って下っていくのが楽しいなんて、もう抗わないという気持ちの表れなのかな?

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2021年3月16日 (火)

歌川広重保永堂版 東海道五拾三次

歌川広重保永堂版 東海道五拾三次 (謎解き浮世絵叢書)


YouTubeで、東海道五十三次を自転車で行くというコンテンツをたまたま見たらこれが面白い。
東海道とか中山道を20kmぐらいずつ歩いて制覇するというのは聞いたことがあるが、自転車で一週間ぐらいかけて行くというのは、車と違って途中途中色々なところが見れるて楽しい。


ということでこの本を買ってみた。


広重の『名所江戸百景』は好きでよく眺めるのだが、『東海道五十三次』もいいですね〜
解説も、刷りの技法とかではなく、そこに描かれている人々の営みや構図の意味を中心に書かれており、絵だけではなく文章も読んでて楽しいです。
数は少ないけど、行ったことのある場所はその時に見た風景を思い出しながら、行ったことのない場所は、冒頭のYouTubeで見た映像を思い出しながら、日本橋から三条大橋まで楽しいタイムスリップを満喫しました。

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2021年2月25日 (木)

世界の「住所」の物語

世界の「住所」の物語:通りに刻まれた起源・政治・人種・階層の歴史


昔、住所を扱う仕事をしていたことがある。
それは、郵便物の送付先としての住所だった。(だから郵便番号と密接に絡んだ複雑な体系で苦労した)


この本の中に出てくるのは、疫病の広がりや感染源を把握するための住所、火事や事件の際に駆けつけるための住所、その他、徴税や逮捕のように市民が目的地を探すためではなく、政府が市民を見つけるための住所といった、さまざまな目的の住所。


そして最近では住所がないと「本人」と認められない。
住所が、ただの通り名称や家屋番号ではなくアイデンティになっていて、住所がないと素性の確かな人間だと示すことができず、色々な手続きをすることも出来なくなっている。


興味深かったのは、日本の住所は世界の中でも特異で、「通り」ではなく「街区」を基本単位としているということ。
言われてみればそうなんだけど、考えたこともなかった。
その違いに伴う考察は日本人として非常に面白い。(だから京都の住所はわかりずらいのか?と思ったりもした)




住所の歴史の中では、住所をつけられることに抵抗した歴史もあれば、住所が欲しくて戦った歴史もある。
普段は何も気にせず当たり前のように使っている住所に、色々な国や地域、人種によって色々な利用目的がある。
考えたこともないような世界に連れて行ってくれる一冊です。

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2021年1月 5日 (火)

国道16号線: 「日本」を創った道

国道16号線: 「日本」を創った道


横須賀からスタートして、横浜、町田、八王子、福生、入間、狭山、川越、さいたま、春日部、野田、柏、千葉、市原、木更津、富津。
東京湾をぐるっと囲むこの道、16号の近くに住んだことはないけど、その一部はどこかしらで通ったことがある。(イメージ的にはトラックばかり走っているような・・・)


そんな道が通る街々の歴史や文化を色々なテーマを通じて紹介しているのだが、これが意外と面白い。
郊外の住宅地、大型ショッピングセンター、米軍基地、音楽、養蚕といった近代の歴史に加えて、地質的な見方や江戸創生前後の歴史まで、幅広く扱っていて、次から次へと出てくる話がどれも面白い。


特に、八王子のユーミンを中心とした、戦後から現代に続く音楽の発展はその頃の情景が目に浮かぶようで面白い。


昔からの土地に住んでて、その土地の歴史や文化を調べたり、川や道を辿ったりするのって楽しいだろうなと、この本を読んでて思った。
明治以降の埋立地に住んでると、街に歴史がないことがちょっと寂しかったりする。

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2020年5月 7日 (木)

甲賀忍者の真実

甲賀忍者の真実
甲賀武士・甲賀忍者の末裔の方の著書。
読んでて十数年前に亡くなった父のことを思い出した。
会社勤めを終え生まれ育った故郷に戻り、地元の歴史を調べ本にする。
著者の略歴を拝見すると、亡父とほぼ同世代の方。

生きていたらこういうことをしたかったんだろうなと。

 

 

 

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2020年2月 5日 (水)

トウガラシ大全

トウガラシ大全: どこから来て、どう広まり、どこへ行くのか


世界中で食されているトウガラシ。
紀元前7000年には既にメキシコで採取され料理に使われていたらしい。


第1章の冒頭にある、南アメリカから中央アメリカへ運んだのは鳥、哺乳類には食べられない辛さで種を守り、その辛さに鳥類は反応しない、という遺伝子の戦略を読んだ瞬間から、トウガラシワールドに引きずり込まれてしまう。


14世紀から15世紀にかけてのコロンブスに始まる大航海時代、ここでアメリカ大陸からヨーロッパに持ち込まれ、さらに世界中に広まり様々な地域の食文化にトウガラシが組み込まれて行く歴史が、この本の中では一番面白いことろ。


確かにトウガラシって、タイ、中国、韓国あたりのイメージが強くて、中央アメリカというよりはアジアの食材のイメージが強い。(タバスコはアメリカだけど、それは加工製品としてだし)


最初はヨーロッパ(の上流階級)にもたらされたのに、そこではあまり受け入れられずアジアで受け入れられた下りから、その後ヨーロッパでは、食材というよりも、激辛料理の大食い大会みたいな我慢大会が流行っている文化的な背景等々、とにかくトウガラシの刺激的な魅力満載の一冊です。


この本によると、塩や胡椒よりも世界中に広まり、食材としてのみならず、媚薬、武器、ドラッグ、鑑賞、魔除けと色々な用途で使われているものはないらしい。
そんなトウガラシワールドへようこそ。

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2020年1月27日 (月)

法華義疏(抄)・十七条憲法

法華義疏(抄)・十七条憲法 (中公クラシックス)


聖徳太子の本を読んでいたら、もしかして『十七条憲法』をちゃんと読んだことがない?
読んだことがあったとしても、すっかり内容を忘れてる?と。


1.和らいで協力すること
2.道理に従うこと
3.天皇の命令は聞くこと
4.礼法を保って秩序を守ること
5.私利私欲を捨てて人民の訴えを裁くこと
6.悪を懲らして善を勧めること
7.賢明な人格者を役人にすること
8.朝早く出勤し夜遅く退出すること
9.何をするにも真心を持ってすること
10.妬むな、怒るな
11.正当な賞罰を与えろ
12.私利のために税を取り立ててはいけない
13.協力して仕事をすること
14.他人を嫉妬しないこと
15.私ではなく公のために進むこと
16.人民を公務に使う時は時期を選ぶこと
17.重大なことは皆んなで議論すること




なるほどなるほど。

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聖徳太子 実像と伝説の間

聖徳太子: 実像と伝説の間


憲法十七条、天寿国繍帳名、法隆寺釈迦三尊像光背銘等で用いられた仏教経典や仏教文献から、聖徳太子の実像に迫ろうというアプローチ。
聖徳太子に関わる資料を正確に読み、そこに考古学や仏教学の知見を組み合わせて描いていくプロセスは淡々として信頼が置ける。


聖徳太子って、色々な時代の色々な人が、自分のイメージする太子像を作ろうとしているから面白い。
史実と見なしたい人、虚構にしたい人、大王(天皇)だったことにしたい人、仏教興隆に力を入れた信仰の厚い人、もしくはそれを国造りに利用しようとした人、政治家としてやり手で中央集権国家を強力に作ろうとした人、等々。


時にはそのイメージを政治的に利用されたりしながら、1400年に亘り受け継がれてきた太子像。


本当の真実なんて歴史の世界では永遠にわからないんだし、不明なことがあるから面白いんだし、人それぞれの太子像があっていいんだよね。

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2020年1月 9日 (木)

天孫降臨の夢

天孫降臨の夢 藤原不比等のプロジェクト (NHKブックス)


久しぶりに飛鳥の世界に浸ろうかと、藤原氏続きで「藤原不比等」と思ったのだが、この著者、聖徳太子虚構説の先鋒の方だった。


しまったとは思ったが、暫く飛鳥時代から遠ざかっていたので、知識のアップデートも兼ねて。


なるほどね。
虚構説の根拠がどうこういう前に、論調(口調?)が好きじゃない。
聖徳太子のあたりはさらっと読み進めて、本題は後半の藤原不比等なんだけど、学生時代に上山春平氏の『神々の体系』を読んだ時の面白さは感じられなかった。


色んな方の学説に触れるのは面白いので、そういう意味では読んでよかったです。

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