IT負債
銀行の第3次オンラインシステムがリリースされたのが、1980年代半ばから1990年初頭にかけて。
多分その時代に考えられるアーキテクチャとしては最適なものであり、現代のクラウドやマイクロサービスアーキテクチャに続く流れを正確に予測していた人なんてほとんどいない筈。
現在も動いている銀行の勘定系システムは、その後の合従連衡の中で顧客数の差やサービスレベルの差だけではなく、色々な経営判断で存続システムとして残ってきたもの。
でもそれは「勝ち残った」のではなく、今となっては「IT負債」や「技術負債」と呼ばれるレガシーシステムの代表例になってしまった。
FinTechの文脈の中では、システム開発の経験もない日経○○の記者や、かっこいいコンサル企業の人達からは諸悪の根源のように言われ、「こうやればレガシーマイグレーションが出来る筈、なぜそれをやらない?」的な記事やセミナーが多い中、この著者は地べたを這ってシステム開発を経験してきたと思われ、システム部門の地位の低さや、ITベンダーの問題等について的確な意見を述べているのは好感が持てる。
今や、経済産業省からも『DXレポート』が公表され(隅から隅まで読んだけど、内容的には的を得ている)、その問題が周知のものとなったレガシーシステムが抱える問題。
著者が言うように、その一つの解がマイクロサービスアーキテクチャであり、そこへの移行がどれだけ難しいかもわかっている人は多いと思う。
でもそれは、システムに携わる人間の目線であり、システムに携わる人間が考える解でしかなく、これを経営課題と考える経営者なんてほとんどいないのではないか(特に銀行では)。
その莫大な投資額や品質リスクを考えると、システムサイドの人間が主導して解決出来るような問題では決してない。
少しでも自分たちで出来ることはないか?と頭を巡らせる一方で、読後には「あきらめ」という虚しさも残る。
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