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2017年9月 4日 (月)

インテンション・エコノミー 顧客が支配する経済

インテンション・エコノミー 顧客が支配する経済 (Harvard business school press)


企業が顧客の関心を引きつけて囲い込む「アテンション・エコノミー(関心の経済)」に対して、我々顧客自らが企業に意思を表明していく「インテンション・エコノミー(意思の経済)」の世界。


システム的には、20年以上前から続くCRMシステム(Customer Relationship Management)から、VRMシステム(Vender Relationship Management)へ。
企業が顧客を管理するのではなく、顧客が企業を管理して、自分に関する情報をコントロールし、RFPを出しサービスを提案させる関係。
なんて素晴らしい世界なのだろう。


企業がマーケティング戦略と称して、セグメンテーションやターゲティングを行って、大量に送りつけてもただ削除されるだけのメール。
録画では早送りされてしまう民法番組のCM(私はテレビはほとんど録画で見てる)。
広告で埋め尽くされて全く見なくなったFacebook。


どれもこれも、本当の私のニーズを知らずに、企業の妄想で行われているにすぎない。




企業と顧客の主従関係を逆転させる、このインテンション・エコノミーという考え方は、既にPDS(パーソナルデータストア)という形で一部の企業で導入に向けて開発が進められているし、政府主導でも情報銀行・情報信託という名でPoCが始まろうとしている。


徐々にではあるが、顧客の関心こそが最も価値のある資産という考え方が浸透し、自分の情報は自分でコントロール出来る世界が始まりつつある。
これが発展するかどうかは、次の2点にかかっているような気がする。
①我々個人の情報リテラシーがどこまで上がるか?
②PDSの代理店(この本ではフォースパーティと称している)が情報のポータビリティを保証できるか?


特に①が向上しないと、どんなにいい仕組みが出来たとしても、それが活用されることがない。


後は、「CRMの次はVRMだ!」みたいに、IT企業やコンサル業の人達がバズワードにしないことを祈るだけ(笑)




企業のデータを顧客側が使えるようになるVRM。この本では、その7つの目的を紹介している。


1.個人が組織とのリレーションを管理する為のツールを提供する
2.個人を自身のデータ収集の中心にする
3.個人にデータを選択的にシェアできる権限を与える
4.個人に自分のデータを、他人がどのようにいつまで使うかをコントロール出来る権限を与える
5.個人にサービス条件を自分のやり方で決定出来る能力を与える
6.個人にオープンな市場で需要を主張する手段を提供する
7.リレーション管理のツールを、オープンな標準、オープンなAPI、オープンなコードに基づいたものにする(ちなみにこの著者はOSS大好きです)




加えて、VRMツールのポイントを6つほど。


1.VRMツールはパーソナル
2.VRMツールは我々を自立させてくれる
3.VRMツールは顧客の意思の表明を支援する
4.VRMツールは顧客の自発的関与を支援する
5.VRMツールは顧客自身による管理を支援する
6.VRMツールは置き換え可能である


ビジネス書ではあるが、これはVRMやPDSのシステム開発をする者にとっては、要件定義の更に上位概念として、重要かつ本質的なことを示唆してくれている。




次から次へとやりたいことが出てきてしまいます。

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