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2015年3月14日 (土)

花神

花神〈上〉 (新潮文庫)
花神 (中) (新潮文庫)
花神 (下巻) (新潮文庫)


大村益次郎。
幕末史において、実は何をやった人なのかよく知らず、靖国神社に銅像があるというぐらいの知識しかなかった。


この時代を「技術」という視点で綴った、実に面白い一冊。
軍事的な技術に加えて、医学や治療法、語学といったものを、人々がどう捉え、どう明治維新に活かしていったのかがよくわかる。


この時代に対する司馬遼太郎の歴史感は、次の一節によくあらわれている。
「大革命というものは、まず最初に思想家があらわれて非業の死をとげる。日本では吉田松陰のようなものであろう。ついで戦略家の時代に入る。日本では高杉晋作、西郷隆盛のような存在でこれまた天寿をまっとうしない。三番目の登場するのが、技術者である。この技術というのは科学技術であってもいいし、法制技術、あるいは蔵六が後年担当したような軍事技術であってもいい。」




明治維新を成し遂げるには、思想や戦略だけではダメで、蔵六(大村益次郎)のような、当時の最先端技術の活用方法を考え、それをもって具体的な実効性のある作戦を考え実行する能力が必要ということ。
それには、蔵六の極端すぎるとも思われる、論理的、実践的な資質が必要なのである。


坂本龍馬や高杉晋作のような、華やかで人を惹きつける力があって、方向性を出して周囲を引っ張っていく能力も必要だが、その最後の仕上げをするのは技術屋であり実務家。
吉田松蔭と高杉晋作を語った『世に棲む日日』と続けて読むと、もっと面白い幕末史が描けたと思うとちょっと残念。
もっと早く読めば良かった一冊です。


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