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2010年3月23日 (火)

和宮様御留

和宮様御留 (講談社文庫)


確か高校生ぐらいの時に単行本で読んだ本を、フト思い出して文庫本で再読。

和宮の降嫁による公武合体というのがどれだけ意味があったかというと、結果論としては、全く意味がなかったのであろう。
明治維新に向けての大きな歴史の流れの中では、江戸幕府の浅はかな知恵としか言いようのないもの。

この小説はそんな歴史の回り道を伝えるものではなく、「フキ」という一人の少女の生涯を通して、この時代に生きる人間の、せつなさ、弱さを伝えるもの。

現代においても、それこそ私が働く会社においても、「上下」という関係の中での「下」の人間が抱く、様々な問題はあるが、歴史(特に江戸時代)物を読んでいると、ある意味それが時代を動かす原動力にもなっているのだが、生まれ持った「身分」「家柄」といったものが生み出す、残酷なまでの悲しみというのを本当によく感じる。


自分達の立場を守るため、エゴを守るためには、庶民の感情どころか、その人生そのものを奪ってしまっても何も感じない人間達と、それに対して何も言えない立場の人間達。

それが、生まれた瞬間から背負った宿命であり、どうにも変えることもできない、変えようという思いも生まれないほどの、強烈なもの。


多分、20年以上前に読んだ時には感じなかった、色々なことを感じながら読んだ。

本というのは、若いころに出会わないと、その本当の面白さを理解できないものもあれば、ある程度の歳を積み重ねてから読むことによって理解できる面白さがある。


そんな面白さがあるのも、読書の楽しみの一つだ。


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