プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル
プロジェクトマネジメントに対する著者の熱い思いがヒシヒシと伝わってくる本。
マネジメントテクニックに関する著作は多いが、この本のように「技」とその裏づけとなる「心」を記した本というのはなかなかないのではないか?(特に日本人の著作では)
武道の教えである「型は美、技は心」という観点を中心にし、プロフェッショナルとしての「モノの見方」を提示している。専門的な能力を持つスペシャリストでははく、技術論や方法論が通用しないときにでも、それらの手段ではなく、あくまでも目的を重視したマネジメントの重要性を説いているのである。
プロフェッショナルとして果たすべき役割や責務、プロフェッショナルとして実践すべきものの見方、プロフェッショナルとして身に付けるべき能力(とその修得方法)、これらの全てを通してプロジェクトマネジメントの「極意」を教えようとしている。
極意とは、人間には掴むことのできない真理に向かってコツコツ頑張った結果、掴むことができた何か。
こう言われると、これまでアーキテクチャ設計や要求分析と違い、その面白さが今一つ実感として持てなかったこの領域も、ちょっと本気で取り組んでみようかと思ってしまう。
後は”続き”で
1.プロフェッショナル責任とは?
①個人のインテグリティとプロフェッショナリズムの確立
正しく事実を言葉にすることと、その言葉と一致した行動を心がける
②プロジェクトマネジメント知識ベースへの貢献
その知見を組織やコミュニティに提供する
「『暗黙知』とは人間の『経験』に基づく知識やノウハウなどであり、
『形式知』として表現されていないものを指す」
③個人の能力の増進
自分は「何によって憶えられたいか」を問い続ける
④ステークホルダー間の利害関係の調整
Win-WinとNo Deal
⑤チームやステークホルダーとの互いにプロとしての協調関係
多様性とリスペクト
2.プロフェッショナルの論理と知覚
(近くのものを遠くから見る極意)
①『型は美』全体をとらえる
われわれが直接把握する「現象」には「パターン」があり、
そのパターンは「構造」が支配している
②『型は美』変化をとらえる
「すでに起こった未来」
定性的なデータを判断するのは「知覚」であり、定量的データ
から推し量るだけではなく、定性的な情報を引き出す。
(仮説を持って進捗レビューに臨む)
③『技は心』待つ
時系列間でのバランス感覚
「未来」から「現在」を見る
④『技は心』見えないものに挑む
「抽象化」や「一般化」する能力は、
「何が重要で、何が重要でないか」という本質的な価値を判断するもの
⑤『技は心』前提を疑う
3.PMBOK超解説
①PMBOKガイドの目的
「内面化」は頭で理解した形式知を行動を通じて自己の中に暗黙知と
して再び取り込むプロセス
形式知と自らの経験や知見との統合を図ることがプロフェッショナルと
して求められる。さらに、自分の暗黙知を含む知見を形式知化すること
は、重要なプロフェッショナル責任
②統合マネジメント
マネジメントの視点は「過去」「現在」の分析の上で「未来」を志向
コントロールの視点は「現在」から「過去」
コントロール=Do things right(ことを正しくする)
マネジメント=Do right things(正しいことをする)
マネジメントは「決断」であり、コントロールは「判断」
「判断」には計画やベースラインという基準=「正解」が明示的で
あるが、「決断」に正解はない
③品質マネジメント
「品質は計画によって作りこむ」
④リスクマネジメント
「昨日の問題は今日のリスクである(デマルコ)」
リスクマネジメントの対象は「既知の未知のリスク」
(未知の未知は対象外)
対応のプライオリティを決めることが重要であって、分析が定性的で
あるか定量的であるかはあまり重要ではない
論理的アプローチ(定量的)と知覚的アプローチ(定性的)の統合が
重要
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