ソフトウェア職人気質
2002年に発行された、ITでは名著と言われるもの。
1人年(1200人月)以上の大規模プロジェクトに適用されるようなソフトウェア工学だけではなく、小規模プロジェクトでは「ソフトウェア職人気質」によるアプローチを採用すべきというもの。
マスター(熟練職人)、ジャーニーマン(一般職人)、アプレンティス(徒弟)というメタファーを用いて、"徒弟制度"によるスキルの修得や、プロジェクトへの適用をうまい表現で説明している。
この"徒弟制度"というのは、OJTのように上から下に指導するだけではなく、職人の世界によくある「師匠の技を盗む」という方法でのスキルの修得も含めた概念である。
大規模プロジェクトのように、対象とする範囲がバカでかくて、かつ外野に対する説明責任を負うプロジェクトでは、ソフトウェア工学の持つ、「体系的」かつ「定量的」なプロジェクト推進というのは、非常に有効なアプローチであり、標準化された成果物とその作成プロセス、その前提での定量的な状況把握は必須であると思うが、それでも各チームの機能要件レベルまで細分化された世界においては、やはりここで言われるような職人的なアプローチと、各メンバーのスキル修得というのは重要なファクターだと思われる。
最近では、「師匠の技を盗む」とは言っても、一人一台のPCが当たり前で、その閉じた世界の作業ではなかなか難しいものがあると思うが、昔は端末ルームとかで、みんながプログラミングとかテストをしていて、隣の人が打つコマンドを横目で見て覚えたり、ちょっとデバッグとかではまっていると、周りがよってたかって教えてくれたりと、通常の作業の中で自然に身に付くものが多々あったかと思う。
それこそ師匠ではないが、周りの職人の技を盗む機会が、普通に用意されていたのである。
トータルで見れば、昔に比べてはるかに便利になったとは思うけど、不便な時代の中にもスキル修得のいいヒントがあるような気がする。
そんなことを考えさせられた一冊です。(2006/1/15)
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